訥々と語るロザリーの体から、徐々に力が抜けていくのがわかった。
 ロザリー、ではなく正確にはサーリアの体から。やがて、かくん、とサーリアの膝が折
れ、その体がドサリと床に倒れる。しかし、その場所にはまだ誰かが立っていた。純白の
夏用ワンピース、ゆるやかに波打つ金髪、やや大人びた整った顔立ち、それに反して未成
熟な体のライン。
 サーリアとは、およそすべてにおいて真逆の外見をもった少女。
 質量を感じさせない体は、フィアが手にする魔力灯の明かりを透過させていた。
「ロザリー……」
『ごめんなさい、ケーニス。ハミルの遺したものが遺産じゃなくて、ただの死体で』
「!! なにいってるんだよ! ッがふ……っ!?」
 叫び、吐血をこらえてケーニスはさらにロザリーに近づく。どこまでも真剣な眼差しで、
「祖父は……、ハミル爺さまは、きちんと遺産を残していてくれたよ。……『真実』って
いう遺産を、ね」
 ふふ、とロザリーは悪戯っぽく、そして淋しげに笑った。
『ものはいいようだわ……』
「そんなんじゃない! それに……」
『それに?』
「……君は、きれいだ! どんな宝石よりも、きれいだ……っっ!!」
『なぁに突然? ふふ、あなた口説くつもり? わたし、幽霊なのに』
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