――――目にするだけで胸が締めつけられる光景。
そんなものが、いくつもいくつもサーリアの意識を通り過ぎた。暴力的な勢いで。
(もういいですっ、もうやめてくださいですぅ〜〜〜〜……っっ!!)
それはサーリアの意識に次々とあらわれる、断片的なイメージの連続だ。それぞれの場
面は、脈絡もなく唐突にはじまり、唐突に途切れる。けれど、それらすべてを見続けるサ
ーリアは、そこにある物語を見いだすことができた。
それは、壊れるはずのない愛が、第三者の悪意によって、もろくも崩れ去っていく、そ
の一部始終だった。自分の心を守るため、サーリアは目をつむり耳をふさいで無視しよう
とする。しかし、イメージは意識に直接語りかけてくるのだ。
(なんでサーリアにこんなもの見せるですか! いい迷惑です――――っ!!)
混乱したサーリアが、声にならない声で絶叫したとき、時化た海の荒波のごとく次々押
しよせていたイメージの奔流が、ぴたりと止んだ。サーリアの意識に、鮮やかにラストシ
ーンを映しこんで。
――場所は、薄暗い、どこかの一室。
ぴちょん、ぴちょん、とナイフの先から滴る血の音まで、はっきりと聞こえた。
青年ハミルの口からこぼれる、荒い呼吸も、煩いくらいはっきりと耳についた。
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