真犯人の候補として、ケーニスの祖父ハミルの名が上がった。
その瞬間、ロザリーは劇的な反応を起こした。
「あ……っ、が………………っっっ!!!!」
矢で射られた獣のように、全身を『びくんっ』と大きく痙攣させ、憑依しているサーリ
アの体を限界までのけ反らせた。尋常ではなく力のこもった腕、極限まで指がこわばり、
背骨が軋みをあげ、まるで自分で己の肉体を壊そうとしているみたいだった。
「…………ぐうっ……! あ……、いやあ…………っっ!!」
断末魔のごとき絶叫。
その体から放射される目に見えない霊気の波が、居間の中に渦巻いてカーテンをはげし
く踊らせた。「ちょっと!?」と、あわててフィアがロザリーに駈けより、その肩を掴も
うとする。
彼女の体から放たれる霊気の刃に衣服を裂かれ、肩に切り傷が生まれた。
「ッ痛ぁ!? なによこれ! アルテさんっ!!」
「彼女の体から膨大な〃気〃が発生してますわ! 迂闊に近づくのは危険です!」
「わあ! そゆことは早くいってよね……っっ」
アルテに不平を述べながらも、フィアは怯むことなくロザリーの両肩を掴み、がくがく
とゆさぶった。けれど、驚愕したかのように見開かれた少女の視点は、どこにも定まって
おらず、虚ろに宙をさまよっている。
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