足の低いテーブルを挟むふたつのソファーの片方に、ステファが寝ている。
その真向かいに座ったケーニスは、昼間と変わらず、なんの仕掛けも必要とせず身の回
りにどんよりした暗闇を漂わせている。彼が居間に入ってくると同時に、それまで安らか
だったステファの寝顔が、悪夢にうなされるように歪んだのは、些細なできごと、だろう
か?
「……………………………………あ、あの〜」
「はい☆」
テーブルの脇の定位置に立ったアルテは、ケーニスのまとう黒々としたオーラにたじろ
ぐことなく、にこやかに微笑む。ケーニスは、よれよれと震える指先を前方のステファへ
と向けた。
「…………そ、そのひと、は……、どうし……」
「いえ、お気になさらず。商売繁盛の置物みたいなものですから。ほら、たぬきとかの」
「あ、はあ……、なるほ、ど……、げほっげほっ」
アルテの、かつてないほど適当でデタラメな説明に、それでもケーニスは納得したよう
であった。しかし、説明された当のステファが、不服を申し立てるように「ううう……、
うう……」と空中を手でかき、悶えている。
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