「な、なにっ? なにする気!?」
『フフッ、わたしのお願い聞いてくれないと、ちゅーするわ』
「なっっっ、バカなこといってんじゃないの!!」
『あら、わたしは本気よ。それに、この子も、まんざらでもないみたいだし』
 ロザリーはそういって自分の――、サーリアの唇を人差し指の先でなぞった。
 さらに、あどけない容姿のわりに豊満な胸を、ぐいぐいとフィアの腕に押しつけてくる。
「ちょ、ちょい待った! アホかっ、やめてってば!」
『ね、ロザリーのお願い、聞いてくれる?』
「うぐっ、そ、それはできないの……っ!」
『じゃあ。……ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……』
 フィアの唇に迫る、サーリアのちっちゃな唇。
 背中はもう窓に接していて逃げ場はない。まさに蛇ににらまれた何とか、な様子でフィ
アは固まり、ぎゅっと目を閉じ、脇には冷や汗をかき、低く低く「うううう……っ」と唸
って、ふたりの唇が重なるぎりぎりの寸前に、
「わかった! わかったから! 離れてっっっ!!」
 叫ぶように、声をふり絞った。
 ぴたり、とロザリーは唇の進行をとめる。すこし間を置いて身を引き、じーっとフィア
のことを見つめた。「…………ウソじゃないわよ」と、ふて腐れたようにフィアはつけ加
える。
「ただしっ、扉の外から聞き耳立てるだけねっ! 中には入らせないから!!」
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