――お嬢さま、さーりあといっしょに遊びませんか?
はじめて、そう声をかけられた瞬間のことを、フィアは鮮明に覚えている。
それは、フィアの世界にはじめて光が差した、瞬間のことだからだ。ある夜、寝室に忍
びこんできたサーリアが、フィアに遊ぼうと提案した。そのときまで、サーリアはフィア
を遠くに眺めたことしかなく、それはフィアも同様だった。同じ場所で暮らしていながら
ふたりの生活に接点はなかった。
ノート家の邸宅には少女といえる人物はフィアとサーリアしかいなかった。サーリアは
ずっと、フィアと一緒に遊びたいと思っていたらしい。けれど、相手は近づくことすら許
されないご令嬢だ。母親が寝静まったのを見計らってフィアの寝室に忍びこむ。サーリア
の行動は小さな勇気だった。
――うん、でも、あたし、『遊ぶ』ってどうするか、わからないわ。
それにフィアがうなずいたのも、生まれてはじめての勇気だった。
――だいじょうぶですぅ、さーりあは遊びの〃ぷろ〃ですから〜っ。
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