そのとき、"きーんこーん♪"と屋敷の玄関でチャイムが鳴った。
……途端に、ステファは芝居を遮られた役者然と、眉をしかめる。
「む〜っ、もう、なにかなー? アルテ、押し売りとかだったら、追い返して」
「承知しました。では、依頼人ならば、どうしましょう?」
「えっ? うーん、それはないと思うけど〜」
「わたし、ちょっと広告をだしてみたんです。この探偵事務所の」
「広告っ?」
「はい、ちょうど今日、世間に向けて発表されているはずですわ」
「広告ってどこにっ?」
前のめりに身を乗りだしたステファの問いに、アルテは優美な笑みで小脇に挟んでいた
新聞紙を差しだした。"夜霧タイムス"――、グランヘヴン最大手の"王都新聞"等には
敵わないが、胡散臭いながらもハデな見出しや、独自性にあふれすぎる報道の切り口に愛
好者は多く、根強く発行され続けている情報媒体だ。
アルテから渡されたステファは、ばさばさと頁をめくり該当広告を探した。
見つける。――かくんっ、とステファのあごが落ちた。ぎぎぎ、と首を動かし、信じが
たいモノを見たようにアルテへ顔を向ける。盲目のアルテだが、そんなステファの表情が
手にとるようにわかるのか、楽しそうに微笑む。
「あ、アルテ……、なに? この広告……」
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