「あら、変ですか? こういうのは強気が肝心かと思いまして。――うふっ」
 珍しく少女のように笑い、アルテは踵を返して居間から出ていく。その背中を見送って
ステファは、改めて"夜霧タイムス"にのせられた『ランクレー探偵事務所』の広告に目
を落とした。
 これもひとつの才能というヤツだろうか……、と思う。

 広告には、ひとりの美女の写真が大きく使われていた。
 見慣れぬ衣――、はるか東方の国で『キモーノ』と呼ばれる衣服に身を包み、上衣をは
だけさせ『サラシ』姿となった彼女が、片膝をついて東方風の刀『長ドス』をかまえてい
る。鋭い、明らかに堅気ではない空気を漂わせて。
 女性は、両眼を閉じたままで、それでも恐ろしいまでの眼力を放っていた。

『――この世にはびこる
 あらゆる謎を一刀両断』の惹句を背にしたその女性は――、アルテに他ならなかった。


 ステファは、呼吸をためにためて、呆然と呟く。

「……………………………………えっ。極妻!?」
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