ステファの背後で、どかーん、やら、ばごーん、やらの爆発音が轟いた。
 そこに、「ぎゃにゃー」やら「お助けですぅ」やらの悲鳴が続いている。
 瓦礫の下敷きになっている紙袋は『〜のパン』という部分しか字が見えていない。
「よいしょ、っと」
 ステファは、がらり、と瓦礫を横によけて紙袋をとりあげた。ずいぶん埃まみれになっ
ている紙袋を、手で、ぱんぱんとはたく。埃もきれいに落ちて、書かれている字があらわ
になった。

『伝説のバ・ン』

〃パ〃ではなく〃バ〃になっていたが、〃○〃の一部が瓦礫とこすれて剥げてしまったせ
いだろうと思った。たいして、気にしなかった。また、〃バ〃と〃ン〃の間に、はたいて
も落ちなかった汚れがあったのだが、それもステファは気にしなかった。
「ふんふふんふふーん♪ じゃじゃーん!」
 鼻歌を唄い、個人的にどんどこ盛りあがる。なにせ、これは一大セレモニーなのだ。
 本当なら、町中をパレードしたいくらいだ。
「とりゃ! 出ってきっなさーい」
 紙袋の口を開き、逆さまにする。ころん、と転がり落ちてきたものを片手で受けとめた。
 あん? と首をかしげた。
 これが、『伝説のパン』なのだろうか、と思う。
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