たったいま一階では、攻城兵器が唸りをあげる戦争のまっ最中だ、とでもいうみたいに。
――一体、なにが起きてるですぅ……?
気になったサーリアは、様子をうかがいに行くことにした。
当然、その『気になった』の成分を分析すれば、大部分を占めているのが〃伝説のパン
の行方〃だということが、わかるだろう。てっきり、もう誰かの手に落ちたかと思ったの
だが、もしかすると違うのかもしれない。ならば、まだチャンスはある、かも。
サーリアは、いつもの衣服を着るのももどかしく、下着姿のままで寝室を飛びだした。
廊下は、窓から差しこむ夕日に、朱く染めあげられていた。日没が近づいている。
轟音の発信源はどこだろう? 屋敷全体が地震に見舞われたように揺れているので、二
階の廊下からではわからない。サーリアは、用心するには越したことはない、と慎重な足
取りで階段を目指し、おっかなびっくり下りていく。
どーんどどーん、という不規則な爆音が、徐々に近づいていくる。
自分以外の者は、いま、どうしているのか。『伝説のパン』争奪戦の中で、サーリアが対
面したのはフィアだけなので、それ以外の者の動きは不明だ。ともかく、台所へ行ってみ
よう。
そうすれば、なにかわかるはず――。
「急ぐですぅ!」
サーリアは、階段をおりる速度をあげた。手すりをしっかり掴み、転ばないように、
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