【二階寝室/17:00】

「ふに……、うぅ〜ん……」
 サーリアは、カーペットの上でごろりと寝返りを打った。
 当然のことながら寝心地がよいとはいえず、不満げに眉をひそめ、ぴくぴくとまぶたを
痙攣させる。屋敷のどこかで、どーん、どーんと地響きがしていた。眠り続けてもいられ
ず、サーリアは仕方なく身を起こす。
 頭の右の上のほうが、ずきずきと痛い。自分はどうしちゃったのだろう、と思う。
 すぐに思いだす。階段を駈けおりる途中、背後からフィアの〃言葉の暴力〃を受けて一
階まで、墜落したのだ。そういえば寝ている間に猫変身も解けてしまったらしい。人間の
姿で、ワンピース型の薄い下着一枚きりという格好だ。
 ここまで運んでくれたのがフィアだとすれば、着せてくれたのもフィアだろうか。
「ん〜〜、頭、痛いですぅ……」
 カーペットに寝転んでいたサーリアのすぐ横に古風なベッドが据え置かれている。
 どうせなら、ベッドに寝かせてくれればいいのに。まったく優しいのか、そうではない
のか、判断に苦しむ。……いや、フィアが優しいことには違いない。ただ、ちょっと荒っ
ぽいところがあるだけだ。そういうことにしておこう。
 どーん、どどーん、どがごーん。
 階下から響いてくる轟音は、やむことがない。それどころか、さらに大きくなっていた。
                  
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