「てやっ」

〃覆面の者〃は、先の奇声に比べて迫力のない掛け声を吐き、ラスティに向かって、跳ん
だ。
 コウモリの羽のように広がる黒のマント。
 ぽかんと口をあけたまま硬直したラスティの目前に着地し、〃覆面の者〃は、マントの
下から片腕を持ちあげた。しなやかな、透きとおる白い肌をした、右手。指がゆっくりと
畳まれていく。
 ラスティは魔法にかかったように動けない。
〃覆面の者〃は、拳にした右手をラスティの額に向かって差しだした。
 そのまま――、

「ぺいっ」

 ぴこん、と人差し指を弾きだして、ごく軽くでこぴんをした。
 ただそれだけだった。
 ただそれだけなのに、ラスティは電撃を食らったみたいに、全身を硬直させた。
 瞳から、意志の光が薄れていく――。

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