彼女を待ち続け、作業は遅々とてはかどらない。無言で、のろくさと手を動かしていた
ステファが、やがて堪えきれないように手の中の造花を段ボール箱に叩きつけた。途端に
フィアが、ぎっ! と鋭い目つきで睨むがお構いなし。
「ううーっ、お腹いっぱいになるくらい、パンを持ってきてくれたら、あの子、所長にし
てあげてもいいのに!」
ステファが、心のこもった声音で、そうぼやき、
「……やっすい、所長の座だなー、おい」
思わずフィアはオヤジ口調で突っこんでしまう。
それを耳にしたサーリアが、常日頃から本来〃お嬢さま〃であるはずのフィアのガラ悪
化傾向に頭を悩ませる彼女らしく「フィアちゃん、言葉遣い悪いですぅ! もっと品よく
……」と注意した。しかしフィアは「うっさい」とつれなく返事をし、サーリアはそれに
対して「うっさくないですぅ!」と条件反射でいい返す。
そこへ造花作りに飽きていたステファが「そーそー、サーリアうっさいんだよ〜♪」と
暇つぶし目的だけで絡んでいく。サーリアの頬をつねろうとするフィア、それに抗うサー
リア、意味もなくサーリアの脇をくすぐろうとするステファ。
そんなふうにして、完全に三人の手が止まった中で、アルテ一人が黙々と機械のように
正確に、造花を作り続けていた。
――いや。
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