わーっ、なんかいきなり修羅場っぽいですぅ、とサーリアは首をすくめた。
〃ロザリー〃そして〃ハミル〃と相手を呼んだふたりは、テーブルを挟んで口論をはじ
める。ふたりは互いを愛し、それを信じていたが、どうやらロザリーと呼ばれた少女は他
所で違う男とも付きあっていたらしい。
そういったことをハミル青年は、一息にぶちまけた。
(ふぇ? ……ろざりー?)
やや時間を置いてサーリアは気づいた。〃ロザリー〃というのは、たしかサーリアの体
を乗っとった少女の霊がフィアに名乗った名前だ。??? とサーリアの頭が、どうしよ
うもないほど混乱する。
「ハミル…………っ!!」
一向に自分の話を聞いてくれない青年に、ロザリーが涙ながらに怒鳴った。
――その瞬間、サーリアの視界が真白く弾けた。視界に映るなにもかもが、一瞬で色を
なくす。それは、まるでサーリアの意識に強引に〃空白〃が割りこんできたような、そん
な現象にも思えた。
サーリア。いま、あなたがみているのは、ロザリーのきおくです。
不思議な声。サーリアの意識の奥に、直接誰かが話しかけている。その声は、よく知っ
ているような気もしたが、けれど誰のものか思い浮かべることができない。……もどかし
い感覚。
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