「黙れ」
一歩、ロザリーへと踏みだして、フィアは拳を固めた。
殴るつもりになったわけじゃない。少なくとも、今は、まだ。けれど――、
「それ以上よけいなこと喋ったら、ブツからね」
フィアの声に〃本気〃を感じとったか、ロザリーは芝居がかった仕草で肩をすくめた。
『なるほど、たしかに〃お嬢さま〃ってガラじゃないわね、あなた』
「…………だからいったでしょ、嫌いなんだって」
自分がいま話してるのは〃ロザリー〃という少女――、かつてこの屋敷で殺されたと主
張する霊魂であるはずなのに、フィアはサーリアに直接話しかけているような感覚にも囚
われた。
だからか、自分の声に熱がこもっているのを、悟る。
抑えめの口調が、きつくなる。フィアは重ねて、いった。もう誰にいってるかも、わか
らなかった。もしかしたら、自分にいってるのかもしれなかった。
過去の自分に。
「大嫌いなんだから。〃お嬢さま〃、なんて。まるで人形みたいで」
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