まずはじめに――。その屋敷は探偵事務所を兼ねていた。
だから当然、そこには探偵が勤めている。所長もあわせて総勢四名の精鋭たち。
これはもう、文句のつけようのない「探偵事務所」っぷりだ。
ただ……、ただ、ひとつだけ問題があった。
その探偵事務所には、決定的に、絶望的に、依頼人が足りてなかったのである。
これは嘆かわしい事態だ。
いや、"嘆かわしい"などという、婉曲な表現はよそう。
その探偵事務所は、『The貧乏 d(^▽^)!』、だった。
王都グランヘヴンを騒がせる『マリア狩り事件』よりさかのぼること数ヶ月。
これは、まだ天使ステファが、自らの代行者たる『魔法探偵エンジェルラビィ☆』と出
会う以前の、小さな事件を記した物語だ。その日は、ごく平凡な晴れの天気で、ごく平凡
な暖かい気温で、ごく平凡な湿度だった。
そんな昼下がりから、物語ははじまる――。
|