……だから、夜はキライだ。
すべらかなシーツの上、毛布の中で、小柄な身をぎゅっと縮めてサーリアは耳を澄ます。
静かすぎる、と思う。いまが何時なのか、さっぱりわからない。身を起こしてたしかめる
気にもなれない。
かちこちと古い目覚まし時計の秒針の音だけが小さく聞こえる。朝になるには、後どれ
くらいかかるだろう。寝室の窓、閉められたカーテンの隙間から、細く細く月光が差しこ
んでいる。夜の匂いを運んでくるみたいに。
それは、あるいは、水の匂いにも似ている。
いつもの夢をみた。もう何度目になるかも、わからない夢だ。
その途中で目が覚めた。
カーテンをあけ、窓から外を眺めれば、この部屋のある共同住宅(アパート)の三階の
高さから、きれいな夜の景色が見えるのかもしれない。そんな気にはとうていなれないけ
れど……。サーリアは胸のうちでくり返す。
――だから、夜はキライだ。
こうして、このままベッドでじっとしていれば、また眠りにつけるだろうか。
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