「ラスティ! できたわよ、テーブルに運んでくれる?」
「あぅ、はーい」
 行儀よく返事をして、ラスティは母シアリィのもとへ戻っていく。
「今日は、いろいろ初挑戦の料理があるのよ。でも、みんな一発で大成功」
「すごいね。おかーさん、ひとつも失敗しなかったの?」
 無邪気に問う娘に、シアリィは自信たっぷり、貫禄のある主婦の笑みで答えた。
「もっちろん。わたしは、天才調理師なんだから。パンも料理も、失敗なんてしたことが
ないわ。もしも、わたしが失敗したら、逆にそれは『伝説』級に価値があるかも。……ふ
ふふ、なんてね」
 シアリィは、茶目っけたっぷりにそういって、ラスティにウィンクした。
 そのウィンクには、いろいろな意味が込められているように、ラスティには思えた。
 それも含めて母の様子に、どことなくおかしな感じがしていたけれど――。

 夕食のおいしさに、ラスティの疑問はすべて消し飛んでしまったという話である。




おわり

   

ご声援ありがとうございました。
来週は一週お休み、そして再来週10/25は、うわさの井戸端会議『予告天国』をお送りします。どうぞお楽しみに〜。

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