ステファは黒くてまん丸で、食べものとは思えないそれに、食らいついた。結果、どう
なったのかは、わざわざ記すまでもなく明らかだろう。

半壊だった屋敷はほぼ全壊し、その崩壊する音は、ただでさえ貧乏だった探偵事務所が、
もはや救われようのない財政地獄へと落ちていくプレリュードに聞こえた。死者がひとり
も出なかったことが、不幸中の幸いだ。
とゆーか、よく生きていたな、ステファ。天使だからなのか……?

*   *   *

 さておき、これが一連の騒動の結末であった。
 ラビィ☆へと変身していたため無傷だったラスティは、なにやら徒労感に包まれて自宅
であるパン屋に帰った。夜の早い時間。店を閉め、台所で夕食のしたくをしていた母シア
リィは、妙に上機嫌だった。
 ラスティも食事のしたくを手伝い、野菜のカスなどをゴミ箱へ捨てにいくと、そこには
見るからに焼きあがりに失敗したパンと、丸められた黒い布が押し込められていた。黒い
布を見た、瞬間、ラスティはおかしな既視感に駆られた。
 そうだ、自分は今日、ステファの屋敷で黒衣の人物と会ったのだ。けれど、まるで詳し
くは思いだせない。いつ、どんな状況であったのかも。まあ、あっさり忘れてしまうくら
いなのだから、たいしたことはないのだろう。
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