次の瞬間、視線を前に向けたラスティは凍りついた。
キッチンの左手、壁際に黒ずくめの謎の人物が立っていた。頭部をすっぽりとまっ黒の
覆面で包み、顔面部にはでっかく〃?(ハテナマーク)〃が記されている。〃覆面の者〃
がいるのは、戸棚の前。
そう、『伝説のパン』を納めた、戸棚の前に……!
「……っ!!」
アルテとの対峙にも、まるで余裕をなくさなかった〃覆面の者〃が、ラスティとの対面
には明らかな狼狽を見せていた。
そしてラスティは、全身を黒衣に被われ、さらにマントに身を包んでいるため外見的情
報の皆無な相手に、きょとんとして首を傾げた。「あぅ、えーと……」と短いためらいのあ
と、不思議そうに口を開く。
「どーしてここにいるの? おかー……」
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