解除し終わったステファは、内心で快哉をあげた。
(よし! わたしの腕を甘くみたようね、アルテ。所長の座は伊達じゃないんだから!)

 ステファは、ゆっくりと『伝説』へと至る扉をあけ――

 意識を失う最後まで、ステファは気づかなかった。
 三十以上にもおよぶトラップは、もとより『解除させる』ために仕掛けられていたこと
を。離れた場所からでも、気配だけでキッチンへの接近者を感じとれる無慈悲なハンター
が、獲物をその場に足止めするためだけに、それらの仕掛けは施されていた。時間にして
約一分。
 その短い時間で、彼女には充分だった。
「――――――ッ」
 ステファ以上に見事な無音の足運びで跳躍し、彼女の背後に舞いおりた、使者。
 人知を超えた存在である天使に、欠片も気配を悟らせず接近し、彼女は今にも涎を垂さ
んばかりのステファの首筋に、優しく、けれど容赦のない手刀をふりおろした。ステファ
が丸きり反応できなかったのは、いっそ幸運だっただろう。
 どさり、と前のめりに床に倒れたステファに、彼女――アルテは嘆息した。
 よかった、と呟いて、
「もし反撃されるようなら、刃をふるわなくてはならないところでした……」
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