「ラスティ! できたわよ、テーブルに運んでくれる?」
「あぅ、はーい」
行儀よく返事をして、ラスティは母シアリィのもとへ戻っていく。
「今日は、いろいろ初挑戦の料理があるのよ。でも、みんな一発で大成功」
「すごいね。おかーさん、ひとつも失敗しなかったの?」
無邪気に問う娘に、シアリィは自信たっぷり、貫禄のある主婦の笑みで答えた。
「もっちろん。わたしは、天才調理師なんだから。パンも料理も、失敗なんてしたことが
ないわ。もしも、わたしが失敗したら、逆にそれは『伝説』級に価値があるかも。……ふ
ふふ、なんてね」
シアリィは、茶目っけたっぷりにそういって、ラスティにウィンクした。
そのウィンクには、いろいろな意味が込められているように、ラスティには思えた。
それも含めて母の様子に、どことなくおかしな感じがしていたけれど――。
夕食のおいしさに、ラスティの疑問はすべて消し飛んでしまったという話である。
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