暴力的に荒れ狂い、渦巻く、光の中心。

 ラスティの――、小柄な少女の体がひざを折り、芝生に両手をつき、神に許しを請うよ
うに頭を垂れている。その背には勇壮にひるがえる、一対の黒翼。……『断罪の剣』を手
に、ステファは少女へと駈ける。
 左右で色の違う泣きはらした両眼が、己を裁こうとする天使を見上げた。しかし、現在
のステファの内面に、私人としての感情はない。それゆえ、哀れみを誘うラスティの表情
にも心がゆらぐことはない。ただ、小さく一言、
「ごめん――――」
 と、短く、呟いたのみだ。その響きは事務的ですらあった。
 ステファは『断罪の剣』をかかげた腕をふりおろす。〈宝具〉の刃が、幾千万の星の輝
きを凝縮した光を放ち、きらめきの軌跡を宙に刻む。その刃は物理的に対象を"斬る"ので
はなく、霊的なレベルで存在を"断つ"のだ。
 あらゆる因果から。……その先に待つのは絶対の"無"

 ラスティの頸部に、神なる御剣がふりおろされた。
1


presented by KURONEKO-SAN TEAM
©KOGADO STUDIO,INC.